1. ホーム
  2. なかよし情報
  3. 20120917号 タイトル:“自分のこと”として考える

台風が九州をかすめて通り過ぎました。大きな被害もなかったようで一安心です。台風が過ぎると、少しは涼しくなるのではないかと期待しているのですが・・・。9月も後半に入りました。早いものです。1週間前、九州自然歩道(天拝湖コース)を歩きました。もう秋の花々が咲いていました。自然はもう秋を告げています。



★クサギの花 九州自然歩道(天拝湖コース)にて撮影 9月9日10:00am

私のメルマガ「なかよしブログ」に「秋の訪れ 2012」というタイトルで、九州自然歩道を歩いたときの花々の様子を掲載しています。よろしければ訪問下さい。
 →http://nakayoshi.kyoikubunka.com/



テレビや新聞で“いじめ”で自殺した子どもたちのニュースが流れるたびに胸が痛みます。自殺する前に何とかならなかったのだろうかと考えてしまいます。苦しかっただろうなあと。

このような悲しいことが起きる度に、関係者についての責任が追及されます。学校や教育委員会、いじめた子どもたちとその親たちなど、誰が悪かったのかをマスコミをはじめ一斉に責め立てます。勿論、負うべき責任は負わなければなりません。それと同時に、もう一つ大事なことがあるのではないか思います。

それはこの悲しいニュースを“他人事”にしていないかということです。自分のこととして考える必要があるのではないかということです。知らないうちに、相手を“いじめる”結果に追い込んでいないか、或いは、誰かが虐められているのを、見て見ぬふりをしていないかということです。

京都大学霊長類研究所教授の正高信男さんは、中学生たちに行った“いじめ”の意識 調査の結果から、「“いじめ”が起きているクラスと起きていないクラスとでは、傍観者の割合が、前者では後者の2〜3倍にも達し、仲裁者は逆に、“いじめ”が起きていないクラスには2倍前後いることがわかった。9割のクラスメートがいじめっ子に冷たい視線を向ければ、攻撃の日常化は阻止され、容認派がクラスの3割ほどはびこると、“いじめ”は歯止めがきかなくなって、エスカレートすることも判明した。(註1)」と述べています。

いじめ”に関して「熱血先生の存在の大切さ」を指摘するのは社会心理学者の山岸俊男さんです。「教師が“いじめ”は絶対に許さないというはっきりした姿勢で臨むことで、生徒の間に安心感や信頼感が生まれ、傍観していた生徒たちがいじめっ子に対して、冷たい視線を向けるようになり、そのことで阻止派の生徒が増え、いじめっ子が“いじめ”を止めるに至る」(註2)と。

しかし、分かっていても“寄らず触らず”という傾向は私たち大人にもあることなので、子どものなかでもこの傾向は生じて当然です。この点を鋭く突くことで、子どもたちと向き合った教師がいます。金沢市の小学校教師(2002年当時)の金森俊郎さんです。(註3)

金森先生は自らの担当するクラス内でK君への“いじめ”が発覚しました。K君は国語が苦手で、テストの点の悪いことでからかわれていました。K君はそれがとても嫌で苦しくなっていたのです。このことを知った金森先生はみんなで話し合うことにしました。

子どもたちから「ぼくも水泳が苦手ですが軽蔑されていません。勉強ができないことで軽蔑されるのはおかしいと思います。」とか「テストは私も悪い点をとることがある。Kさんのことだけを笑ったりしたら悪いような気がします。」、「K君がにらみ返すのは、ほどんどの人が悪口を言っているからで、今度から悪口を減らそう。」など、子どもたちから他人事のような発言が続きました。

たまりかねた金森先生が発言に割って入り、「きれいごとでごまかすつもりか、君たちは。自分のことを棚上げして言ってるじゃないか」「かっこよすぎるんだよ。勉強できないからと笑っていたでしょ、自分が。それから噂のことにどうして誰も触れない?自分たちが広めたんでしょ。笑ったんでしょ。自分をえぐらないで、人のことをがちゃがちゃがちゃ、君たちはそんなに偉いのか」と。

ものすごい大きな声です。みんなをにらみつけています。絶対にいじめを許さない、そんな姿勢がビンビン伝わってきます。「あなたたちに考えてほしかったのは、どうして止められなかったのかということ。そういう質問が自分に向いてないんだよ。」

このやり取り、この真剣な金森先生の姿勢は、読者である私にも向けられていると感じました。“いじめ”をテレビや新聞で読んで、「悪い人だ」「ひどいことだ」と他人事としている私に、「自分のこととして考えなさい!」と言われたように思いました。

忙しく暮らしていると、“流す”ことが多くなります。その結果、人の痛みや悩みへの共感する力が弱まります。金森先生の一言は、心豊かな人生を歩もうとするなら、人の痛みや苦しみを自分のこととして考えること、そして、その人に寄り添い、支え合ってくことが大切であることを教えてくれています。幸せな生き方とは、そういう生き方なんだよと。

【引用した著書】
註1
「ヒトはなぜヒトをいじめるのか」正高信男著(BLUE BACKS 講談社刊)
註2
「心でっかちな日本人〜集団主義文化という幻想」山岸俊男著(日経新聞社刊)
註3
「4年1組 命の授業〜金沢学級の35人」 NHK子どもプロジェクト編(NHK出版)

教育文化研究所
〒818-0081福岡県筑紫野市紫2-7-21-801
電話 092-923-9339