私は約20年間にわたって、幸福度世界一の国デンマークから色々な事を学んできましたが、世界中を不安に陥れている新型コロナウイルスの蔓延についても、デンマークならばどのような対応をとるのだろうかと注目しています。おそらく、まずは蔓延をどう防ぎ、収束に向かわせるかを最優先に考えるでしょうが、おそらくデンマークは長い射程でこのことを捉えているのではないかと思います。

では、新型コロナウイルス対応についてのデンマークの現状を伝える記事を紹介しましょう。

■コロナ危機で「働く人を全員守る」デンマークと日本の驚くべき大違い ~非正規も正規も関係ない:デンマークでは「均等待遇」

            現代ビジネス 2020年4月7日発信

デンマーク在住の小島ブンゴード孝子さんにデンマークの状況と日本の現状を比べてもらった。

デンマークでは感染の拡大を防ぐために非常事態宣言が出され、10人以上の集まりや、濃厚接触の可能性が高い事業の営業の禁止などを政府が発表している。だが、家族と仕事の両立や、自力で学べる仕組みへ向け、日常的にIT教育に多額の公的資金が支出されてきたため、感染防止のための在宅ワークや在宅学習への移行は円滑だという。

日本との大きな違いは、働き手のために税金を使うという基本姿勢が、非常時の安心をつくっている点だ。また、企業別ではなく職業別の労組が67%(2016年時点)の組織率を維持し、会社や雇用形態を越えて同じ仕事なら同じ賃金と労働条件が確保されてきた点も大きい。

その結果、パートタイム労働者は正規労働者扱いであり、労働条件はフルタイムと変わりない。年金も含め、それが労働者の最大の安心・保証に繋がり、今回の局面での政府の保障措置も、すべての働き手に行きわたりやすい。

日本では、非正規、フリーランスなど雇用保障が極端に弱い働き手が増やされ続け、リーマンショック、大災害と緊急時のたびに大量の働き手が貧困化する構造を作り上げてしまった。そんな構造が、「労働弱者」とも言える働き手への差別も増幅させた。

そうした事態に真に対応するには、一見、迂遠なようでも「企業の活躍より働き手の安心」を軸にした労働政策の大転換という長期の視点が不可欠なことを、今回の感染拡大は語りかけている。

行動自粛どう呼び掛ける? 識者「日本は表現があいまい」(西日本新聞2020/4/1 )

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、各国首脳が国民に向けて発信するメッセージが注目を集めている。有効な治療法がなく、国民に行動制限を求めるしかない現状では、心に響く首脳の「言葉」は大切だ。各首脳のキャラクターの違いも透けてくる。

 「何より子どもたちの健康、安全を第一に考えた」。2月27日、安倍晋三首相は全国の小中高校などに一斉休校を要請した。評価は相半ばしているが、唐突な発表に現場は混乱。「私の責任で判断した」として、根拠を十分説明しなかったことにも批判が集まった。

 同様に休校要請をしたデンマークのフレデリクセン首相は、当事者である子ども向けにオンラインで会見を開いた。「外で遊んでも大丈夫ですか」「70歳のおばあちゃんは感染したら死ぬの?」-。子どもたちの質問に一つ一つ答える様子はテレビで3月13日に放送された。在日デンマーク大使館によると、フレデリクセン氏は就任時、「私は子どもたちのための首相になりたい」と述べたという。

★デンマーク首相 メッテ・フレデリクセン氏(デンマーク社会民主党党首)

 北海道大公共政策大学院の鈴木一人教授(国際政治)は「なぜ学校に行けないのか、なぜ家にいなければいけないのか、子どもが抱える不安やストレスをしっかりケアした会見」と高く評価。「政治において最も大切な説明責任を果たしている。全ての国が行うべきことだ」と話す。

 同18日、ドイツのメルケル首相が行った演説も会員制交流サイト(SNS)を中心に拡散している。メルケル氏は入国制限などについて、旧東ドイツ時代の経験に照らし「移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって、こうした制限は絶対に必要な場合にのみ正当化される」と述べた。医療従事者の他、買い占めに対応するスーパーのレジ係や商品の補充係に感謝の気持ちを述べた点なども支持されている。

 鈴木教授はメルケル氏の演説に関し、科学的根拠に基づく発言が多い点にも注目する。「根拠のある正確な情報を伝えることで国民の信頼を得ている」。対照的な例に、米国のトランプ大統領が「4月12日の復活祭までに経済活動の自粛を緩和する」とした発言(後に撤回)を挙げる。「国民に希望を持たせることは大事だが、科学的な根拠がない。偽りの希望を持たせることは事態を悪化させる」

 国民性や政治家への信頼度は国によって異なる。鈴木教授が重視するのは、国民の共感を得る「キーワード」の発信だという。

 フランスのマクロン大統領は、全土での外出制限を表明した会見で「(ウイルスとの)戦争状態」という言葉を使った。鈴木教授は「国民の行動を制限するときには、危機的な状況が一瞬にして共有されるメッセージが大切。日本の政治家はあいまいな表現が多く、これといったキーワードがない」と話した。 (本田彩子)

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 この二つの記事からも、デンマークなど先進国の優れた姿勢が伝わってきます。

 新型コロナウイルスへの対応は目先だけでなく、自分のことだけでなく、もっと大きな広範囲な協力と連帯を必要としています。このことは良い意味で世界が一つになり協力して、立ち向かっていけることを確信できるチャンスではないでしょうか。愛と知恵があれば、きっと私たちは“コロナ禍”を転じて“福”と為すことが出来るはずだと信じてやみません。

                教育文化研究所 代表 長阿彌 幹生